セルフレビュー 2012‐②「山田純嗣個展 絵画をめぐって-死んでいるのか、生きているのか」

セルフレビュー 2012‐②
「山田純嗣個展 絵画をめぐって-死んでいるのか、生きているのか」 2012.11.5‐12.8

昨年(2012年)9月頃まで遡る。

不忍画廊の新スペース(移転場所)が決まる以前から、初めての新作個展は「山田純嗣展」からとずいぶん前に決めていた。山田純嗣が行ったこれまでの個展や様々な企画展を見てどれもがその場を良く考えた展示をし、何より私自身がその展示空間に離れがたい心地よさをいつも体験したからだ。
八重洲時代(1976~2012.8)の不忍画廊では作家に一任する個展展示はほとんどなかったが、今度の画廊(2012.9~)では出来るだけ作家に展示を任せてみたいと思っている。その最初が山田純嗣だった。
内装と引越しを終え、何も展示されてないギャラリーに来て頂いたのは個展2ヶ月前の9月、出来上がっている出品作はその時1点しかなかった。それからわずか2ヵ月で10点以上を完成させてきたのは、山田さんの制作過程を知る者にとっては本当に信じ難い事なのだ。
・・・元になる名画(平面)のモチィーフや風景などを石膏などで立体パーツとして作成、名画と同じ構図になるよう配置して撮影、出来上がった写真作品の上にドローイング(エッチング手法による)を重ね、表面をコーティング・彩色して完成・・・
物理的に気の遠くなる制作時間、綿密な制作計画と気力・体力・精神力が伴わなければ不可能なのだ。 アトリエがある名古屋から当画廊(日本橋)への梱包発送する時間<たった一日!>のみ、足りなっただけなのだ。

会期前日に出来上がったばかりの作品をワゴン車に積込み、アトリエのある名古屋から東京まで、山田さんと全作品と一緒に画廊に戻り、展示を始めるとあっという間に完了してしまった。その時はあまりのシンプルな展示で「これで1ヶ月の会期持つのかなあ」と思ってしまったのは、私の大きな思い違いだった。1ヶ月に及ぶ「山田純嗣展」はツイッターやフェイスブックといった現代の “口コミ” でも話題となり、これまでの3倍以上、1000名ほどの(特に若い層の)来客で連日、賑やかな展覧会となった。 最終日の翌日(12/9)が撤去日であったが、まだまだ展示を見続けていたいと思った。

展示風景

2013.2 不忍画廊/SHINOBAZU GALLERY 荒井裕史

追:会期後も続いているweb企画《往復書簡<絵画をめぐって>山田純嗣×小金沢智》は、真剣に制作を続けたいと思っている(特に20~30代の若い)作家には、必読!