セルフレビュー 2013‐①「斎藤真一展“初期名作と瞽女、さすらい”」

2013年1月と2月の企画は、当画廊開廊以来欠かせない2作家、斎藤真一と池田満寿夫から始めた。
ともに1960年代作品を中心に展示、新しいスペースでどう見えるのか、現在でも鮮度は失われていないか、再確認したいと思った。

「斎藤真一展“初期名作と瞽女、さすらい”」 2013.1.7-26

まず1月の斎藤真一展、荒井一章(現会長)が画商となった1963年頃に初めて購入した作家・作品である。参照→コラム
斎藤真一といえば瞽女や独特の赫い夕陽。この「赫」色で多くの美術ファンを引き付けているが、初期作品の魅力をほとんどの美術ファンは知らないと思う。
同郷の画家・国吉康雄や、生涯尊敬していた藤田嗣治への傾倒が見られ、無国籍風景の中にジプシー・音楽家・裸婦などが飛んだり歌ったりしているアンリ・ルソーのような作品がある。岡山で生まれ育った斎藤真一は大原美術館にも何度も足を運び西洋絵画コレクションから、構図やエッセンスを取り入れた。今展では、この頃の作品を中心にした。僭越ながら美術館の小さな一室のようにも思え、改めて良質な絵画であることが再確認できた。
また今展では、ご遺族の協力を得てviewing roomにアトリエを再現、個展用に描きかけのまま遺された油画数点、イーゼル、筆、絵具、蔵書(西洋絵画の画集)、斎藤真一先生が聞いていたCDなどもお借りして展示して頂いた。生前の映像もモニターで写したが、斎藤真一の顔や声を初めて知るも多くとても好評で、感動のあまり涙ぐむ方もいらっしゃった。
会期中の1/10(土)には、2012年上越市に100点以上の斎藤真一コレクションを寄贈した池田敏章氏による心温まるギャラリートーク、WEBへのご寄稿もお願いした。
斎藤先生のご長男・斎藤裕重さん、トークをして頂いた池田敏章さんには、この場をお借りして感謝申し上げます。
これまで10回以上の遺作展を開催してきたが、これほど作品が生き生きと見えた展覧会は初めてだった。今後の展開にも繋げていきたいと思う。

2013.3 不忍画廊/SHINOBAZU GALLERY 荒井裕史