瀬戸内市立美術館「木版画の詩人 鈴木敦子展 ~この空の向こう 金子みすゞの世界を詠う~」開催

瀬戸内市立美術館にて「木版画の詩人 鈴木敦子展 ~この空の向こう 金子みすゞの世界を詠う ~」開催。
金子みすゞの詩をモチーフにした新作木版画45点を中心に
2001年以降の旧作を合わせ、合計79点の出品となります。

会 期:9月6日(金)~11月4日(月曜祝日)
会 場:瀬戸内市立美術館
※詳細につきましては、瀬戸内市立美術館HPをご参照ください。


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-この空の向こう- 金子みすゞの世界を詠う 「木版画の詩人・鈴木敦子展」
《会場》 瀬戸内市立美術館(岡山県牛窓) 《会期》 2013年9月6日 ~ 11月4日

金子みすゞの詩を元に1年半かけて制作された《新作》木版画・ガラス絵45点を中心に、
初期作品から代表作を合わせ合計79点出品、鈴木敦子の公立美術館では初の個展です。

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瀬戸内市は平成16年<牛窓・長船・邑久>三つの町が合併して出来た新しい市。
オリーブ園で40年描き続けた画家・佐竹徳コレクションと芸術文化の拠点として
平成22年、瀬戸内市役所牛窓庁舎の3,4階部分に瀬戸内市立美術館が誕生しました。


オリーブ園で有名な牛窓、美術館のあちこちに植えられていますが
南国の青い空、青い海にオリーブのグリーンがとても良く合っています。


展示室前の受付、この左側に小さなミュージアムショップがあり、
金子みすゞ、鈴木敦子の関連書籍、 郷土の洋画家・佐竹徳のグッズの他、
オリーブオイルやオリーブを使用したバスタイムグッズなども並んでいます。

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- 展示室 1 -

展示室1では、今展の為に1年半かけて制作された 新作(木版画、モノタイプ)を展示しています。

↓《白い帽子/2013》  展覧会のチラシに使用された作品。
チラシにはみすゞさんの詩『白い帽子』を敦子さんが直筆で書いたものが一緒に使用されました。

↓ 左:《一日の終わりに/2013》  展覧会のポスターに使用された作品。
「屋根の下の赤いボンボリ?は何ですか?」と来館者に良く聞かれるそうです。

↓ 右端:《秋の香/2013》  展覧会図録の表紙に使用された作品。
みすゞさんの詩を読んでいなければ、この少女の表情は出てこなかったかもしれません。

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展示室1の部屋中央のガラスケースには、《窓の灯/2013》の制作プロセスがわかるように
段階摺り、版木などを展示・解説しています。
敦子さんのほとんどの作品は10版以上の摺りを経て完成します。
版木にニスを塗って色彩を微妙にぼかしたり、
ニードルのような道具を使い木版画ではあまりみられない極細い輪郭線なども描いています。

鈴木敦子さんと担当学芸員の安中さん
展示ケース内の摺りの段階について、更に詳しくお話ししているのでしょう。

↓ 上図:《窓の灯/2013》第1版 - 6版
↓ 下図:《窓の灯/2013》第7版 - 12版

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金子みすゞさんの詩『雲のこども』を元に制作した、12点のモノタイプ連作《旅する雲 1 - 12 / 2013》
展示室2への入口を挟み、6点づつ展示しています。
12点の雲の合間を抜けて、過去の代表作中心による展示室2へと入ります。

《旅する雲 1 - 12 / 2013》は、日出から日の入までの空と雲の様子を繊細な色彩の変化で表現しています。

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- 展示室 2 -

展示室2には、2001 - 2012年までの代表作を展示しています。


↓ 《思い出ゴハン/2001》今展で最も初期の作品。
この頃の摺りは現在ほど精緻ではありませんが、
人物の表情・色彩はどこかで見た事があるような懐かしさを感じほのぼのとしていて癒されます。

展示室2の部屋中央に鎮座するレトロな深緑色のソファ。
ここにで一休みしながら、展覧会図録を見たり、展示風景を眺めたりする事が出来ます。

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展示室2の奥にあるガラスケース内には、人気の高い作品《窓辺の壜/2004》の制作プロセスを展示しています。

●手前は版木、背景・壜の淡い色彩部分・壜の輪郭線、などで版木を分けて彫ります。
●版木は裏面も無駄なく使用しています。版木を透明アクリルBOXの上に置き、鏡を下に置いて裏面も見えるように工夫しています。
●画像左下方に見えるのが彫刻刀。敦子さんは特別な道具ではなく、どこでも普通に販売されている道具を使って制作しています。

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↓ 《午後の光/2004》2005年に刊行された詩画集『午後の光』のタイトルとなった作品。
垣内磯子さんによる20編の詩、敦子さんによる20点の木版画で構成・刊行されました
(詩画集はまもなく絶版となります)

↓ 右手前:《内緒だよ/2011》
震災があった2011年は兎年です。 ―12年後の兎年まで忘れないようにーという趣旨で開催された
企画「ウサギマミレ、マレニネコ」展の為に制作されました。

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↓ 展示室2と展示室3の境目の壁面には風景の代表作が展示されています。
左手前から・・・《宵の裏通り》、《眠りの街》、《夜明け》、《夕暮れ散歩》 全て2007年作
身近な場所やモノをモティーフにする鈴木敦子さんは、近所の風景も幻想的な作品にしてしまいます。

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- 展示室 3 -
展示室3は、初めて制作したガラス絵が中心です。
木版画とは違う新たな表現方法を、今展をきっかけにして掴んだようです。

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↓ 《銀色の雨/2013》ガラス絵
ガラス絵は今回の展覧会で初めて制作して頂きました。
敬愛する木版画家・清宮質文氏もガラス絵を制作していますが、
ガラス絵はガラスの向こう側に描いていくので、完成した時に一番先に付けた線・色・形が見えるという
これまでとは違う制作過程をしなければなりません。

↓ みすゞさんの詩『不思議』からこの作品が出来上がりました。
詩と同じタイトルにはせず、内容を捉えながら現代の鈴木敦子の作品にしています。

左:鈴木敦子《春の雨/2013》ガラス絵   左: 金子みすゞ『畠の雨』詩(鈴木敦子による竹串で書いた文字)


↓ 左:《うれしい木/2013》ガラス絵  右:《幸せな木/2013》ガラス絵

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作品のスケッチノート
木版画を制作する前のスケッチです。
どの作品かすぐにはわからないほどスケッチ(エスキース)はごく簡単に描いています。
ディテールなどは頭の中にあり、掘り進めながら完成させていくのでしょうか。

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応接室にて(2013,9.11撮影)

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RSKテレビ「イブニングニュース」の取材、中央の女性は番組メインアナウンサー。
敦子さんは話すのが苦手と、少々緊張気味です。

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今展を企画して頂いた岸本館長と敦子さん

「金子みすゞさんの詩を絵で表現できないか?・・・最初に浮かんだのが鈴木敦子さんであった
・・・みすゞさんが生きた大正から昭和初期と今の時代とは隔世の感があるが
人の心の深淵に入り込む純で清明な世界は時代を経ても不変である。
・・・そのような世界の表現が出来る数少ない作家の一人が鈴木敦子さんであろう・・・ 岸本員臣」
『鈴木敦子 この空の向こう ―金子みすゞの世界を詠う―』
展覧会図録より抜粋


↓ 瀬戸内市立美術館の皆様

↓ 今展担当の学芸員二人と記念撮影。左が安中さん、右が藤本さんです。

瀬戸内市立美術館へのアクセス。岡山駅から赤穂線で20分程の「邑久駅」へ。
邑久駅から両備バスで20分程「紺浦」停留所=瀬戸内市立美術館、旧庁舎前となります。

瀬戸内市立美術館ホームページ http://www.city.setouchi.lg.jp/~museum/exhibition2.html