「描くこと」について
長く木版画を制作しているとどうしてもマンネリに陥る。技術は上手になるのだが、技術だけで制作してしまうからだ。そんな時僕は、水彩画や油絵を描いてみる。描くという事を忘れたくないからだ。彫りや刷りをとおして、間接的に作っていく木版画と違って、筆を使って直接絵を描くことは、目の前に生まれて来る色や形にその場で反応していく感覚が必要になる。時には体全体を使って描くこともあり、版画を作るときの体の動きとは違った動きが生まれ、それが画面に反映して来る。「描く」ということの原初的な面白さがそこに在り、木版画も「版で描く絵」であることを思い出させてくれる。 山中 現
山中 現 1/Gen Yamanaaka
1954~ 福島県生まれ 東京芸術大学美術学部油画科卒 埼玉県在住。
西武美術館版画大賞展」《日版商買上げ賞》受賞後、擬人化されフォルムのモノクロ木版画で日本で一番忙しい木版画家となる。2011年、福島県立美術館で開催された「山中現展」は木版画、油彩、モノタイプの代表作が集められた大回顧展となった。2011年6月、不忍画廊での新作個展で、初のコラグラフ集 『玩具頌』を刊行する。