山田純嗣: 『版画芸術140号』掲載

「絵画をめぐって – The Pure Land -」とした今回の展示では、メトロポリタン美術館クロイスターズ蔵「囚われの一角獣」をはじめに、根津美術館の国宝「那智滝図」や山種美術館蔵、速水御舟「炎舞」等、私の好きな名画をモチーフにした版画、写真、立体のインスタレーション等で構成する予定でいます。
「美術」という言葉が生まれる前から「絵画」は存在していて、その美術以前の「絵画」にもある、それを「絵画」たらしめているものが顕在化するような展示ができればと思っています。ここで言う「絵画」というものは、物質的な安定したものではなく、不安定だけれど感覚的には確実に存在するもの、ということを指していて、それを「The Pure Land」(浄土)という言葉に置き換えてみました。また、今回モチーフにした古典作品は、神話や宗教にからんだものが多く、単純に浄土という言葉を連想させる作品が多いのもその理由です。
ちなみに添付した作品は、故宮博物院蔵「水図巻 第六段 黄河逆流」をモチーフにしたものです。

(『版画芸術140号』掲載)