渡辺千尋 「象の風景-無風地」
1980 エングレービング 182x260mm ed.60
対談 渡辺千尋×門坂流(2007年10月14日 会場:松明堂ギャラリー)
渡辺 ・・・ビュラン、エングレーヴィングってのは、刃物が完璧に砥げていると、快楽なんですよ(中略)
鉄のやいばと、銅の、素材の関係性っていうのにね。
門坂 エロティックなんですよ。
渡辺 そう、エロティック。
ところが、この刃物が砥げない人、そしてテクニックがない人にはね、地獄だと思います。(中略)
門坂 (中略)映画の「ターミネーター」でさ、こう、手がぐっと入るような感じの場面があるじゃないですか。
硬いところに入っていくという感じで。
渡辺 要するにこれが豆腐みたいになるのよ。銅板が。金属じゃないのね。その感触なんだね。
門坂 手の中で金属が柔らかくなっていく感じ?これはやらないとわからないんだよね。だからそれの魅力だよね。
渡辺 その魅力に取り憑かれるか、あるいは金属から撥ねつけられちゃったら、もうこの世界には入っていけないと
思うね。逆に、そこにいったん行きついちゃえば、ずうっと行けると思うね。銅版画は。・・・
(『渡辺千尋の仕事展』2014年長崎県美術館図録より抜粋)