【銅版画家(ビュラン)・友人】
「渡辺千尋VS門坂流 エングレーヴィング競作展」 2007年 松明堂ギャラリー案内状より
渡辺氏との出会いは1989年の「現代ビュラン作家展」の時に来廊してくれ、少し話しただけで意気投合し、お互いの画集を交換する事から付き合いが始まりました。彼が送ってくれた画集はビュランによる銅版画集『象の風景』、私が送った画集はペン画集『風力の学派』でした。彼の画集を見るとエングレーヴィングの硬質な強い線に対する熱情的な思い込みの深さを、幼年期の深層を捻り出した血の滲むイメージの表現に重ねているように感じました。私の場合は15年間続けていたペン画に技術的な限界を感じ、人に勧められてエングレーヴィングを始めました。それまで銅版画を特別に意識した事はなかったのですが、元々線による素描が好きで絵の道に進む事になり、最初は硬質な鉛筆から始め、ペン画を中心に描き続けていたのですが、辿り着いた究極の技法がエングレーヴィングだったのです。同じ道具を使いながら対極的な表現の二人展はとても面白い企画だと思っています。