私の好きな千尋作品…「アダムとイヴ」「机上の惨事」「象の風景-N村地区」「深夜二時」 島村栄一/フリー編集者

画像をクリックすると
拡大します

【仕事関係で知り合い、すぐ「兄貴分と弟分」の関係に移行】

「机上の惨事」
3.11のとき、廊下の壁に「No.9 机上の惨事」を飾っていましたが、眺めているとつい「首都直下型」を想起して心穏やかならず、すぐに押入れの奥にしまい込みました。「アホか」という渡辺さんの声が聞こえてきそうです。

●お互い20代はじめ頃からの知り合い。渡辺さんはデザイン事務所、僕は出版社に勤めていて、渡辺さんには僕が担当していた雑誌の表紙デザイン・挿絵などをお願いしていました。カット1つでも、着想の面白さ、ユーモアのセンス、線の美しさが抜群でした。イラスト(*1)は、渡辺さんが僕の下宿に泊まりに来たとき、即興で描いたものです(つげ義春「李さん一家」のパロディ)。その後、渡辺さんの口利きで『レコード・日本の放浪芸』『季刊誌・藝能東西』などの仕事に参加させてもらい、それが契機となり、小沢昭一氏マネージャー・津島滋人氏を通じて、僕の好きな「落語」の仕事にも携われるようになりました。亡くなる9か月前までは、飯田橋の仕事場を2人で借りて使っていました。●渡辺さんには多くの影響を受けました。特に、別役実、唐十郎、つげ義春、それに中山ラビさんを「教えて」もらったことが大きかった。また、コーヒーを飲みながら、『ざくろの空』『殉教の刻印』の執筆経過について、逐一熱く語ってくれたことも忘れ難い思い出です。今でも時々、渡辺さんの夢を見ます。

イラスト*1