「眠りの街」は自宅周辺の住宅街を上から見たらどんな風だろう、と想像しながら制作した作品です。
夜も深まった住宅街はとても静かです。まるで誰も起きている人など居ないかの様。
しかし灯りの付いた窓の一つ一つにはそれぞれの人の暮らしが営まれています。
楽しい一日を過ごした人、
疲れてへとへとになった人、
悩みを抱えている人。
色んな人が灯りの下で暮らしていて。
その小さな灯りを月明かりが見守る様に照らしている。
そんな何でもないごく当たり前の日常をとても大切に思っています。
下絵を描いた時は黒、もしくは青系で仕上げるつもりでした。
摺る当日、温かみを出す為には赤紫が良いのでは、と思い変更しました。
この作品では静けさを感じられるように色数はごく少なく抑えました。
(すずきあつこ/木版画家)
『版画芸術』2013年12月より