目の服

設楽知昭  「目の服」
1993 tempera,cotton 1660×1500mm

 

綿布で作った服を着てテンペラ絵具を掌につけ服に描くのです。
「目」と「服(私のからだ)」と「まわりの世界」、この三つの関係が、普段は「目・からだ」と「まわりの世界」であるのに対して、この作品の場合は「目」と「からだ・まわりの世界」になるのでは思います。そういう感覚です。
これは服の形をしていますが、「絵画」です。絵は私とまわりの世界の中間にあるもので、人間の代替物とも言える存在だと考えています。
しかし、それにしても、この作品は中心(視点)が、原理的には服のやや上のこちら側(つまり服を着た状態の目のところ)にあるわけで、服を脱いだときにはその原理から外れるわけですが、そうしたときに、また想うこともあるわけです。
「他者」と言うときに、私は複雑にそう想うのです。「目」の孤独というものがあり、それはすべての人に共通することなのだし、死者においてもあったのだということです。