設楽知昭 「二人ノ片腕ノ私ガ手ヲ洗オウトスル」
2001 oil on polyester film 600×600mm
これはなかなか面倒な話です。
まず、私が着ていた服を使って等身大の人形を作る。
それから、洗面器を前に片腕にした人形を立たせたる(正確には上からワイヤーで吊す)。
少し離れたところに、透明のポエリエステルフィルムを透明のアクリル板に固定し立てる。
そして、フィルムに油絵具で人形と洗面器をトレースするように描く。
フィルムを裏返して、洗面器を挟んでもう一人の片腕の人形が対面するようにして、油絵具でトレースするように描く。
背景なども含め全体の色彩を調整し、仕上げる。
フィルムと同サイズのパネルを用意し表面を白く塗装し反射面とする。
パネル面と1cm程の隙間が出来るようにガラス板に密着したフィルムを外枠で固定する。
このように箱状(標本箱のような)になった半透明な絵は、表面の反射光と裏側からの光も透過して、反射光と透過光が混交した状態になります。ライトボックスは暗いところで見たほうが効果的ですが、これは明るいところで反応します。
私は脳の中で図像がどのように結ばれているのかと考えたときに──おかしなことを言いますが、頭の中に小さなギャラリーがあって──、反射光と透過光がミックスされたわずかな奥行きを持った絵を見ているのでは、と思ったりするのです。
さて、その頭の中のギャラリーの絵はもっとぐにゃぐにゃしているように思いますし、ギャラリー自体もやわらかいはずです。この絵は13年前の作品です。最近の私の絵はだいぶんぐにゃぐにゃしていると思うのです。