17年前の作品と久々のご対面。まだ21歳の頃の作品です。当時自分がなにを考えていたかというと、感情や思いつきまかせで、世界が狭く、そして小さな事にもときめいていました。17年間、沢山の個展をして、自分が作家を名乗って活動する中で対外的な表現へ変わっていったけれども、この時期の作品は内向的で誰かに作品を説明する気など全然なかったと思います。誰かへ向けたメッセージとかではなく、色合いや形、線の気持ち良さを画面と自分との関係の中で完結させています。その未熟さを今になって晒す事は非常に恥ずかしい気持ちではあるのだけれど、この時の自分に戻れないという点では大切な宝物のように思えます。もうこの時の私には戻れないのです。
_新作で描いた「生まれたかった私」は、喪服の少女と無憂樹という釈迦が生まれた場にあった木を配置して、一つの画面の中に生から死までの_時間を入れてみようと試みました。未来である死の場面で、過去である誕生を振り返るという想像の瞬間。一つ一つ未熟なものも悪しきものも人も世界もすべて愛すべき肯定的な気持ちでありたいと思うのです。
第一部はプチクロニクルという企画ということで、たまに真剣に過去の自分と向き合ってみると、ただただ前を向いて突き進むだけでは得られない落し物に気付けるかもしれません。
呉亜沙
左:「無題」2000 中央:「歩く」1999 右:「無題」1999
「Girl」 2002
左:「Escape」2001 右:「丸くなれない人」2001
「Inter space」 2004
左:「escape -pop out-」2004 右:「新宿」1999