藤浪理恵子: 技法について(1)

フレスコ・セッコについて

フレスコは漆喰地が乾きいらないうちに描き、漆喰中の石灰により天然の皮膜をつくりだすが、セッコ(イタリア語で乾いたという意味)とは、乾いた漆喰に描画を施す技法である。古くは酢酸テンペラなどが用いられた。石灰の皮膜のかわりとなる、媒体のある絵の具を用いることで可能になる。アクリル絵具による壁画などは、この現代版といえるだろう。

金網の使用について

漆喰は横どうしの張力により,塑性を保っているので、木などの湿度によって伸縮するものの上に塗る場合、ひずみに耐えるため金網を用いる。私の作品は、上記の技法を踏まえた上、展開した独自のものである。この方法で制作し10年になる。
現在、物理的な外圧(落とす、ぶつける)を除いては、大旨安定した状態を保っている。

銅板テンペラについて

16,17世紀頃、 身につけて持ち歩く、ミニアチュールとして普及したものであると聞く。-銅の板にテンペラ、油絵の具などで描く技法。- 銅は油分と強く結着する性質を持ち、また湿度による伸縮、歪みも無いため堅牢な画面を築く。酸化による緑青の発生も、テンペラ、油絵の具による油性の皮膜により押さえられる。100年を超えるものに、うっすらと銅イオンの青がしみ出したものもある。それも、この技法ならではの、美しさと言える。
日本画、油画における技法の安定信仰というものがあるが、紙は酸化しまた、虫、黴のおかされる、麻であるキャンバスもまたしかりである。絵画も年を取る。その重ねられた時とともに美しく存在するものであると私は考えている。

私は埋もれた技法にこだわり、その魅力を感じ、既製品のキャンバスにはない<時と物質の香気>を感じ、表現を行いたいとおもっている。

藤浪理恵子