荒井一章: 図録「MASUO & JAPAN」より

池田満寿夫がよくかいた書に「女は海 男は舟」というのがある。
彼はこれを書いてはニヤリとする。彼の生きざまを見事に表現したことばと思うからだ。
1983年陶芸と出会い熱中していく。伝統工芸としての陶芸の世界では<ロクロ10年>といわれている。技術を習得することがすべてなのだ。池田は、そんなことには目もくれず、ひたすら練って造るつくる。琳派が加わり、般若心経も合体する。緊迫感溢れるMASUOオブジェの数々が誕生するのだ。
まだ池田満寿夫が有名になって間もない頃、アトリエを訪ねた私に不思議な形の自家製ギョーザなる物をごちそうしてくれた。ノリ巻きのような皮を巻いた細長いものだった。これを作る手つきが、私にはそのまま陶芸につながっていったように思えるのだ。天才池田満寿夫の手にかかると、たちまちにして陶土は魅力あるオブジェに変身してしまう。
今回はMASUO&JAPANがテーマである。楽しみながら池田が晩年たどり着いた“日本回帰”にふれてみたいと思う。

荒井一章
(図録 『MASUO & JAPAN』 より抜粋)