最古の銅版画技法であるエングレービングは、その道具の名をとり<ビュラン彫り>とも言われ、一般的には紙幣の印刷方法として知られています。滑りやすい銅板上にビュランを曲直自在に彫刻する技術だけでなく、その切先を鋭利に砥がなければならない(渡辺いわく)地獄があり、この鉄の刃を砥げない事が要因で断念してしまう作家がほとんど。<ビュランが作家を選ぶ>とさえ言われる所以です。
渡辺千尋と門坂流は<ビュランに選ばれた>稀有なアーティストと言えます。正規な銅版画教育は受けず、ともに細密なペン画や油彩画を描きながら必然のようにビュランに出会い独学でマスターしました。今展では希少なエングレービング作品をそれぞれ10(計20)点とその全原版20点を並べる画期的な展示となります。日本が生んだ2人のビュラン・アーティストの作品と原版を通して、その芸術の神髄に触れて頂ける事と思います。
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