設楽知昭 「ロボットになって街を歩いた」
2012 oil and encaustic on canvas 1000×803mm
この絵の裏面にはこんな落書きがあります。
ロボットニナッテ街ヲ歩イタ
人々ノ気配ハスルノニ姿ヲ見ルコトハ出来ナイ
過ゴス時間ガ違ウカラダロウカ
時代遅レノ遣リ方デ ロボットハ 光線ヲ吐ク
錆ノ味ガスル涙ガ出ル
君ニ逢イタクナル
涙ノコトヲ話シタイ
以前、ローマで買った古い絵葉書のこと──ある広場の写真なのですが、露光時間が非常に長く、人々の姿がかすんで見えないのです。しばらくその場にあった馬車でさえぼんやりと馬もわずかな影となっています。
「禁断の惑星」(Forbidden Planet:1956年アメリカ映画)ではロビーというロボットが登場します。もちろん中には人が入っています。子供のころ魅了されたロボットの原型です。。
この絵に使われたエンコスティック(蜜蝋画法)は半透明で、異なる時間や場所が二重、三重に重なる様子に適したものだったかもしれません。涙や錆が血液と混ざり固化したようにも感じます。*この映画はシェイクスピア作「テンペスト」の宇宙版といってよいものです。ある惑星に娘アルティア(テンペストではミランダ)と棲むモービアス博士(プロスペロー)は自らが造り出した怪物(潜在意識が具現化し巨大なエネルギーとなったもの)とともに滅びるのです。