設楽知昭 「ふたつの夜をめぐる滝」
2014 oil and tempera on canvas 1000×803mm
三重県名張市、奈良県と接する辺りに「赤目四十八滝」があります。渓谷にたくさんの滝があり、それらをめぐるのです。昨年の春に訪れたときは午後も遅かったので途中で引き返すことになりました。少し陽が陰り始めた頃、私たちは夜の滝を想いました。谷間の流れは折り込まれるように心に入ってきました。
昼と夜の対比にあってそれらを繋ぐように滝を描こうと始めましたが、描き進めると「ふたつの夜」に統合されました。夜を数えることで日を重ねてゆく─陽暦ではなく陰暦のほうが心に添ったのです。
今年の春、再び「赤目四十八滝」を訪ねました。斜めに切り立った岩山や登り降りする幅の狭い路や階段、そして多様な滝の有り様にめまいがするような感覚があり、私たちはふらふらと頼りなく一日中さまよったのです。その夜、私たちはこの絵の中を歩いたのかもしれないと話し合ったのでした。
*この絵に使われた青系の油絵具は手練りで作ったものです。