設楽知昭 「露光」
2013 oil and tempera on canvas 1167×910mm
郊外の自動車修理工場の空き地に置かれたたくさんの廃車が髑髏(しゃれこうべ)のように見えたことがありました。私はそのとき、芭蕉の「野ざらし紀行」を読みましたので、陽に曝(さら)された様子を手がかりに「野ざらし」というものになる絵を描こうと始めました。途中でフェルトを切り抜いて作った人形(ひとがた)のスタンプに絵具をつけて画面に押しつけたりしました。「印仏」と呼ばれるもので、仏像を彫ったスタンプを紙に押して祈念することと似ています。始めのころ、「死」が陽に曝される苦しみの絵になるのかと思いましたが、しだいになにか賑やかな様子になってきました。その頃、長年使っていた写真撮影用の露出計が壊れて新しく買い直し、それであちこちを計っていましたら、この絵のタイトルは「露光」にしようと思いました。そして絵が終わるころ、「露光・ロココ」とふざけていましたら、「ロココ美術」は「死」に隣接しているなと感じたのです。